第5章 シュガーヒル
シシリーは本当にこぢんまりとしたイタ飯屋だった。
イタリアの国旗に赤と白のチェック柄のテーブルクロスが印象的だった。
何を二人で食べたのかは余り覚えていなかった。
多分、パスタにピザ辺りを頼んだのだろうと思う。
シシリーで食事を済ますとヤマザキがこう提案してきた。
「クラブは初めてだよね?」
「ええ、初めてよ」
「じゃ、取り敢えず静かでゆっくりできる911に行こうか?」
911とは、当時外資系の会社が多い六本木では外国人などや外資系の会社に勤める人たちが多く行くクラブだった。
私は、クラブは初めてだったのでそれに同意したのだ。
911は本当にお客さんも物静かな人達が多かった印象が残っている。
店に入ると壁面沿いに小さな丸い脚の長いテーブルが立っていた。
その一つのテーブルに私とヤマザキは落ち着いたのだ。
「美都、何飲む?」
「え?何があるの?」
「ジンとか飲める?」
「分からないけど、ジュースみたいだったら飲めるわ…」
「なら、ジンライムにしようか?」
「ええ、それにしてくれる?」
そう言うとヤマザキは自分の飲み物とジンライムを買ってきてくれた。
そのジンライムがとても美味しかったのを覚えている。
少し飲んでお店の雰囲気に慣れてきたころだった。