第4章 バレンタイン
誠一は私の友人のエリと一緒に食事に行くことに何の疑いも感じていなかった。
本当はエリではなくヤマザキと1日共に過ごすことになっていたのだ。
そんな事を誠一は知らない。
私はこの時も全くと言って良い程、罪悪感などを感じてはいなかった。
誠一に求めても得られないのであれば、他の人から得ればそれで良いではないか。
そんなことを思い感じていたのだった。
私は自分勝手だろうか。
自己中心的だろうか。
時々、それで悩む時があったが罪悪感はなかった。
この年の2月14日はとても良い天気だった。
確か、平日だったと思う。
そんな、平日の日にヤマザキはホテルの予約を取り、有給を取ってくれていたのだ。
この日もモスグリーンのニットワンピースを着て、キャメルのコートを羽織って出かけた。
スタージュエリーの前に行くとすでにヤマザキが待っていてくれた。
私はヤマザキの姿を見ると軽く手を振って見せた。
すると、彼も軽く手を振ってくれた。
「お疲れ。待たせたかな?」
「いや、今僕も来たところだから大丈夫だよ…」
「なら、良かった…」
私たちはまるで恋人同士の様に見えたに違いなかった。
ヤマザキはいきなり私の手を取ると、その手を引っ張りスタージュエリーの真向かいにあるショップへと連れて行った。
そのショップは若い女性が好むような服を沢山揃えてある店だった。