第25章 懐玉
「それは"アリ"だ」
九十九さんは否定しなかった。
それどころか、この方法が一番簡単だという。
非術師を間引き続け、生存戦略として術師に適応してもらえばいいと。
「要は進化を促すの。鳥たちが翼を得たように。恐怖や危機感を使ってね。だが、残念ながら私はそこまでイカれてない」
そうだろう。
もしアナタが私のような考え方をしていたら、今頃は実践していただろうからね。
「非術師は嫌いかい?夏油君」
その質問に私は一拍置き「わからない」と答えた。
自分の意義だったものが揺らぎ始め、分別と受容ができなくなってしまっている。
弱者故の尊さ、弱者故の醜さ。
非術師を見下す自分、それを否定する自分。
「術師というマラソンゲーム。その果てのビジョンがあまりに曖昧で、何が本音か分からない」
自分の気持ちが分からない。
「どちらも本音じゃないよ。まだその段階じゃない」
九十九さんは選択肢を与えてくれた。
非術師を見下す自分。
それを否定する自分。
これらはただの思考された可能性に過ぎない。
「どちらを本音にするのかは、君がこれから選択するんだよ」
それだけを言って彼女は高専を後にした。
本当は悟に用があったらしいが、今は悟には単独の任務に行っている。
後で私から言っておこう。
「あ、そうだ。最後に」
バイクに跨った九十九さんはゴーグル越しに私を見つめ、理子ちゃんが亡くなっても天元様には何の問題も無かったことを告げて去っていった。
「……でしょうね」
そうじゃなかったら、天元様は人類の敵になっている頃だよ。