第25章 懐玉
そんな折、私は彼女と出会った。
一人高専で、項垂れながら考え事をしていると灰原の明るい声が聞こえた。
術師には珍しい根明な彼は私が座っていたベンチの隣に腰を掛けた。
コーラを奢ってやれば、ニコニコと笑ってごくごくと喉を鳴らす。
ぷはっと息を吐いたのち、軽くゲップをする灰原はずっと笑っていて。
その笑顔に少しだけ救われている自分に気が付いた。
「明日の任務、結構遠出なんですよ」
「そうか。お土産頼むよ」
「了解です!!甘いのとしょっぱいのどっちがいいですか?」
「悟も食べるかもしれないから甘いのかな」
しょっぱいものだと悟はごねるだろうし。
それにおいしそうにお菓子を食べる彼の姿を見るのは嫌いじゃなかった。
妹も口いっぱいにお菓子を詰め込んで食べるから、つい重ねてしまう。
ああ、そう言えば今年の誕生日プレゼントは何をあげたんだっけか。
……思い出せない。
「……灰原」
隣でコーラを飲み干してゴミ箱に投げ捨てる彼の後姿に声を掛けた。
灰原はゴミ箱から離れると犬のようにたたたっと走ってベンチに腰をかけた。
「呪術師、やっていけそうか?辛くないか?」
なんでそんなことを聞いたのか。
同情、してほしかったのか。
「辛いです。苦しいです」
そんな言葉を待っているのか、その言葉に安心したいのか。
女々しいにもほどがあるだろう。
「そー……ですね。自分はあまり物事を深く考えない性質なので」
うーんと唸る灰原。
でも次には親指を立ててどや顔で言ってきた。
「自分にできることを精一杯頑張るのは、気持ちがいいです」
「そうか。―――そうだな」
じゃあ。
もっと頑張れば、私は以前のようにその気持ちさを味わうことができるのだろうか。