第25章 懐玉
その年の夏は忙しかった。
昨年頻発した災害の影響もあったのだろう。
蛆のように呪霊が湧いた。
今までは非術師を守るという名目で決して楽ではない呪霊を取り込む行為を行ってきた。
吐瀉物を処理した雑巾を丸飲みしているような、そんな味を。
祓って、取り込んで、また祓って、また取り込む。
繰り返し繰り返し。
全ては非術師を守り助けるため。
そう、思っていた。
だけど、揺らいでしまった。
見失ってしまった。
なんのために。
一体誰のために。
自分達よりもずっと年下の少女の死を喜ぶ非術師たちのために、術師は……。
私はこんな――――――……。
あの日からずっと言い聞かせている。
私が見たものは何も珍しくない。
周知の醜悪。
知った上で私は術師として、人々を救う選択をしてきた。
あんな惨劇を目の当たりにしても、術師としては当たり前のことで、当たり前のことだから、真っ当でいたい。
ぽっかり空いた心の内を埋められないまま、時だけが過ぎる。
朝が来て、現実がきて、夢の覚める温度を知って。
失われた時間はもう二度とこない。
もっとみんなと一緒にいたい、とそんな約束ももう二度とできない。
そんな幻と化す夢を、今もまだかき集めようとしている私は本当に馬鹿だ。
ブレるな。
術師としての責任を果たせ。
そう言い聞かせても。
しつこい油汚れのように私の脳裏にこびりついて離れないあの日の光景。
呪霊も見えないくせに。
呪術も使えないくせに。
恵まれていないくせに。
「猿め……」
あんな惨劇を目の当たりにしても、術師としては当たり前のことで、当たり前のことだから、当たり前のことだからこそ。
真っ当でいたかった。