第25章 懐玉
「理子ちゃん?」
名前を呼んでも反応が一つもなく。
地面を汚す真っ赤な血が、私の血をも冷たくした。
目の前で一体何が起こったのか。
混乱する頭では理解するのに時間がかかってしまった。
「ハイ、お疲れ。解散解散」
ここにいるべきではない存在に、目を見開く。
「なんでオマエがここにいる」
だって、おかしいだろ。
ここにいるべきはオマエではなく、悟のはずなのに。
「なんでって……。あぁ、そういう意味ね」
男の手には拳銃が握られている。
ああ、そうか。
理子ちゃんはあれで撃たれて死んだのか。
妙に冷静な頭でそんなことを思っていた私に、男は信じがたい事を口にした。
「五条悟は俺が殺した」
「そうか。死ね」
悟がオマエみたいな奴に殺されるはずがない。
だが、本当に死んだのなら代わりに私はオマエを殺す。
複数の呪霊を側に置き、攻撃できるチャンスを窺う。
その間、男は自分語りをはじめていた。
「薨星宮と"忌庫"は隠す結界。入り口に見張りは置けない。扉の位置さえ分かっちまえばあとはザル」
なぜオマエがそのことを知っている。
呪術師の中でもそのことを知っているのは少数のはずなのに。
「この時期から術師は忙しくなるし、今、高専には蠅頭が溢れている。外はてんやわんやさ。呪力のない俺は透明人間みたいなもんだ」
呪力がない……?
……そうか。
そう言う事か。
なぜ高専内の結界を破って入ってこれたのか、その理由が漸くわかった。
天与呪縛のフィジカルギフテッド。
だから容易に結界内に入ることができたし、呪力がないから私達に気づかれることなく悟の背後を取れたのか。