第25章 懐玉
「……私は」
震える小さな声。
理子ちゃんは、初めて本心を話してくれた。
いつもの偉そうな態度でも、無駄に高尚な喋り方でもなく、彼女自身の本当の声を聞かせてくれた。
本当は怖いのに怖くない振りをして、自分に言い聞かせる為だけの喋り方は、自分を虚しくさせるだけだ。
生まれた時から彼女は特別で、特別が普通だった。
危ない事はなるべく避けて、この日の為だけに生きてきた。
両親を亡くした時のことはよく覚えていないらしい。
悲しみも苦しみも寂しさもない。
だから同化をしても、みんなと離れても大丈夫だと思っていた。
いつか、そういう感情はなくなると信じていた。
そう、言った。
だけど、気付いてしまった。
沖縄でのバカンスで。
今まで知らなかった世界を見て、今まで抑えていた本心があふれだしてしまった。
「もっと、皆と……一緒にいたい」
大粒の涙を零し、鼻水だって垂れ流してくしゃくしゃの顔で胸の内を曝け出す。
「もっと皆と色んな所に行って色んな物を見て……もっと!!」
それが聞けただけで充分。
君が決めた選択を、君の人生を、君の未来を、私達は守り抜こう。
私はクスリと笑って彼女に手を差し伸べた。
「……うん!!」
目じりに溜まった涙をそのままに、彼女は年相応の満面な笑みを浮かべた。
彼女の差し出した手を握ろうとしたその時。
乾いた音が彼女の頭を打ち貫いた。
ゆっくりと地面に倒れる彼女はピクリとも動かなかった。