第25章 懐玉
「ここが……」
「あぁ」
参道からトンネルの中に入り抜ければ、目の前には大樹が広がった。
天元様の膝元、国内主要結界の基底。
薨星宮・本殿。
「階段を降りたら門をくぐって、あの大樹の根元まで行くんだ」
できることなら最後まで道案内をしてあげたいところだが、そこは特別な結界の内側。
高専を囲う結界とは別物だ。
招かれた者しか入ることはできない。
だから、私ともここでお別れだ。
「そうすれば天元様が同化まで君を守ってくれる」
横目で彼女を見れば、その表情は悔いが残っているものだった。
自分の運命と自分の人生を天秤にかけて揺らいでいる。
だから私は彼女に手を差し伸べた。
悔いのない人生を彼女自身が歩めるように。
「それか引き返して、黒井さんと一緒に家に帰ろう」
「……え?」
「担任からこの任務の話しを聞かされた時、あの人は"同化"を"抹消"と言った。あれはそれだけ罪の意識を持てということだ。うちの担任は脳筋のくせによくまわりくどいことをする」
もし、理子ちゃんが同化を拒んだ場合のことは既に悟と話し合っていた。
お互いに同化はなし、という結論に至った。
天元様を敵にまわすかもしれないというのに、私たちはビビるどころか少しだけそうなってもいいかもしれないとさえ思っていた。
なんとかなる、と。
私達なら、悟と一緒なら大丈夫だろうと。
「私達は最強なんだ」
だから。
「理子ちゃんがどんな選択をしようと、君の未来は私達が保証する」
君の本音を聞かせてくれ。
今何を思って、何を考えているのか。
君の要望を優先しよう。
天元様の命令どおりに。