第25章 懐玉
だと言うのに。
「傑。戻るのは明日の朝にしよう」
そう言ってきた。
絶対理子ちゃんの落ち込んだ顔を見てそう言ったろ。
いつの間にそんな甘い奴になったんだ。
昨日のオマエなら問答無用で高専に連れ戻したはずだろう。
「天気も安定してんだろ」
してるけど。
「それに。東京より沖縄の方が、呪詛人(じゅそんちゅ)の数は少ない」
「もう少し真面目に話して」
キメ顔で何をふざけたことを言っているんだ。
「悟。昨日から術式を解いてないな」
理子ちゃんや黒井さんに聞こえないくらいの小さい声で悟に耳打ちをする。
術式だけじゃない。
睡眠もまともに取っていない上に、今晩も寝るつもりなどないだろう。
いざという時、倒られても困る。
だったら安全な場所に早く向かうのが得策じゃないのか。
それでも悟は笑って、「問題ない」と言った。
桃鉄99年やった時の方がしんどいとも。
「それに、オマエもいる」
…………。
私のことを信頼し頼ってくれているからこその言葉。
こんな言葉一つで絆されてしまうなんて、私も悟にはつくづく甘いな。
「もしもし、灰原かい?」
私は灰原に電話をかけ、沖縄にもう一日滞在する旨を伝えた。