第22章 黒閃
俺も夏油もハイになっていた。
「伏黒ォ!!もっと自由にやってみろよ‼」
瞳孔が開きまくっている夏油の楽しそうな声が聞こえ、その声に煽られるように俺もまた影を自由に、術式の想像を、解釈を広げる。
鵺を飛ばし、蝦蟇を放ち、万象を、玉犬を――――――。
夏油が隙を作ってくれているおかげで、俺は自由に動けている。
楽しくて仕方ねえ!!
だが、特級もずっとやられっぱなしとはいかなかった。
呪力を影全体に放てば、俺の不完全で不格好な領域は崩れる。
いや、わざと崩したんだ。
そうすれば奴には不意を喰らい、油断しまくっている特級の懐に入るくらい簡単だ。
隙だらけの特級の腹に夏油の鍵が貫かれた。
残り僅かの呪力がそうさせたのか、それともハイになっているからなのか分からないが、夏油の意識が研ぎ澄まされているのを感じた。
そして彼女の呪力が黒く光り、鍵に流し込まれる。
黒閃……。
鍵が差し込まれた箇所が大きくはじけ飛ぶ。
それでもまだ力が余っている特級は夏油に腕を伸ばすが、玉犬が特級の胸を貫く方が早かった。
奴の体内に取り込まれた宿儺の指を回収すれば、特級は跡形もなく消え去り、結果も消えた。
「……疲れた」
地面に膝をついて、ぼうっとする頭の中に思い浮かぶのは後二人の同級生のこと。
「……どこだよ、アイツら」
こみあげるモノを口から吐き出し、地面に倒れた。