第22章 黒閃
カエル野郎はぷくぅと口を膨らますと、その口から何かを吐き出した。
私は咄嗟に右へと逃げたが、虎杖は地面を蹴り壁を走りカエル野郎の背後へと回り足蹴りをかました。
どんな身体能力だよ……。
壁走るとか……靴の底に吸盤でもついてんのかオマエは。
心の中で嫉妬していると、カエル野郎は虎杖の腕を掴んだ。
「虎杖!!」
「つかまえ―――た」
カエル野郎の言葉と同時くらいだろうか。
私の蹴りと虎杖の蹴りがカエル野郎の背中と顔面に直撃した。
地面に転がりはしたが、これでダメージを与えられたとは思えない。
鍵を取り出しながら、私は先ほどカエル野郎が吐いた液体を横目で見る。
壁にべったりと付着するそれは真っ赤な血だった。
……まさか、な。
嫌な予感はした。
その予感が当たらない事だけを祈りながら、私は鍵を握りしめる。
「なんだぁ?強いなぁ……楽しくないなぁ」
楽しくなくて結構。
こちとらお遊びでオマエの相手をしてんじゃねえんだよ。
向こうの攻撃を警戒しつつ、少し離れた場所でもぐら叩きをしている伏黒と野薔薇を見る。
あっちは心配しなくてもよさそうだ。
術式範囲は広いが、その分本体に攻撃能力はたぶんないはず。
不安材料だった術式範囲と被害者数、結界全てが本体に引き算として作用している。
伏黒もそれをわかっているはずだ。
だったら、心配はいらない。
あるとしたら、このカエル野郎だけ。