第21章 諦念
「人にも自分にも本心を隠すのがお上手なことですこと。あんたのその本音とやらはひとっつも自分のためじゃないでしょ。はぐらかして逃げまくって。弱虫」
臆病者で卑怯者で弱虫。
自分の心にさえ向き合えずに自分の心に嘘をつくくらいなら、諦めるんじゃなくて嫌いだって言った方がいいんじゃないの。
そうすれば、そのうざったいうじうじも治るでしょ。
「黙って聞いてりゃ言いたい放題言いやがって。じゃあオマエには隠し事の一つや二つはねえのかよ。隠し事はいけねえことか。罪なのかよ。弱点なのかよ。どうなんだよ」
今まで黙っていたが声を荒らげる。
その声に私もムキになってしまった。
「そこまで言ってないでしょう!!勝手に変な風に解釈すんなよ‼」
「そう言ってるようなもんだろうが!!私がそう受けとったんだからさ!!」
「お前ら落ち着け。今何時だと思ってる」
私はパンダ先輩に、は真希さんに羽交い締めにされた。
バタバタと暴れる私達の鼻息は荒い。
お互いから一ミリも目線を外さず睨み合う。
「……今日はお開きだな」
「ああ」
「しゃけ」
私達の大喧嘩を見た彼らはそう呟いた。
パンダ先輩と狗巻先輩と一緒に、食堂を後にした。
食堂から出て数歩。
私の目からは大量の涙が零れ落ちた。
「お、おい野薔薇……」
「高菜?すじこ……」
いきなり泣き出した私に戸惑う二人は、そっと背中に手を回し、自販機の前にあるベンチへと座らせた。
頬を伝う涙を拭い、垂れる鼻水を啜る。
「……なんで、言ってくれないんだろ」
弱音を吐く私は嫌い。
だけど、今だけは許してほしい。