第14章 明日
彼の攻撃が当たり、風船のように割れる。
が、私は見逃さなかった。
割れる直前、アイツは姿を変え下水路へと逃げていくのを。
「楽しかったよ」
ズルン、と液体のように潜り込む。
排水溝を叩き潰すが、手応えがない。
取り逃がした。
スマホを取り出し、猪野君に電話をかける。
「猪野君。本丸が排水口から逃走しました。……えぇ、私といた地点から東南に向けて虱潰しにお願いします。今なら君でも祓える」
電話を切り、次に伊地知君に電話をかける。
「伊地知君、車の手配を。家入さんにも連絡をお願いします」
伊地知君に夏油さんの事を頼み、私たちは奴を追うことに。
「私達も追いましょう」
しかし、虎杖君もまた地面に倒れた。
平気だと言っていたが、あれはアドレナリンが放出されていたから痛みを感じなかっただけだったのか。
「虎杖君!!」
どんなに声をかけても返事はない。
虚ろな瞳が私を映すが、次第にその瞼はゆっくりと閉じられた。
暫くすれば伊地知君がやってきて、目の前の惨状に言葉を失くしていた。
「これは……」
「あちらに倒れている夏油さんを運んでください。重症ですのでゆっくりとお願いします」
「わ、わかりました!!」
私は虎杖君の腕を自分の首に回し、重たい身体を支える。
少し離れた場所では、伊地知君が夏油さんを横抱きにして衝撃を与えないように走ってきている。
それを見ながら私もまた、車へと急いだ。