第13章 狂愛
高専に戻り、自分の部屋に行き寝間着に着替える。
その時扉がノックされた。
部屋の外には夏油が立っていて、そのくらい表情を見るに未だにぐちゃぐちゃ考えているんでしょうね。
腕を引いて中へ招き入れる。
「何か飲む?」
「いい……」
「そう。じゃあ適当に座って。ホットミルクでも作ってあげるわ」
カップに牛乳を注ぎレンジで温める。
少しハチミツを入れるとおいしいのよね、まろやかになって。
「はい」
「ありがと」
カップに口は付けなかったけど、飲みたいときに飲むでしょう。
「で、何か用?」
「…………」
「何もないのに私の部屋に来たの?」
「……………」
「黙ってたら分かんないんだけど」
はぁ、と息を吐いてホットミルクを口にする。
おいしい。
時計の針の音だけがやけに大きく聞こえる。
その時間があまりにも長く感じて、少しいらってした。
だってそうでしょう。
用があるからここに来たのに、さっきから何も言わないんだもの。
何しに来た?って思ってもおかしくないじゃない。
そんな風に思っていたら、漸く夏油が口を開いた。
「釘崎はさ、あんな風に誰かを好きになったことってある?」
「は……?」
思わず漏れた声。
何を言っているんだ。
「好きな人を呪ってまで一緒にいたいって思う?」
「……それはその人の匙加減じゃないの?」
夏油は小林茜の事を言っているんだろう。
呪霊になってまでずっと一緒にいたいと、愛していると言っていたあの子の事を。
「おかしくなるほど人を好きになったりする人っていんじゃん。ストーカーとかさ。小林茜とか……祈本里香、とか……」
最後の方は声が小さくてよく聞き取れなかった。
聞き返しても何も言わないから、聞かれたくないことなのかも。
それに関しては正直どうでもいいわ。