第13章 狂愛
掛軸の絵は真っ白で、描かれていた生首はどこにもない。
これに小林茜の生首が描かれていたと言っても、信じる人はいないでしょうね。
何も描かれていないただの掛軸を手に、私は2階へと向かう。
私の気配を感じた同級生2人は、ゆっくりと振り向いた。
斎藤廉は未だにガタガタと震えていて身体を小さく丸めている。
「あんたの言っていた通りだったわね。もう、これはただの掛軸よ。何もない」
「……ほんとだ」
掛軸を見て、夏油が小さく呟いた。
それは安堵なのかどうかは分からないけど、きっと夏油のことだから呪霊の気持ちを汲んでいるのかも。
馬鹿だなって思う。
呪霊は呪霊でしかない。
そこになにかしらの感情を持っても意味ないでしょうに。
呪術師をやっていればこんなことざらにあるし、夏油だって私なんかよりそういう経験沢山してるはずだけど、どうして感情移入をするのかさっぱり。
冷たいって言われるかしら。
いや、言わないか。
夏油は"そういう人間もいる"とわかる人間だから。
「戻るわよ」
任務は終わった。
ここに居続ける理由はない。
部屋を出る私と伏黒だけど、夏油だけは一人未だに部屋に残ったまま。
じっと少年を見ている。
それを私達は黙って見ていた。
「聞きたいことあんだけど、いいか?」
「な、んですか……」
「オマエは小林茜の好意に気づいていたのか?」
その問いかけに、呪霊がずっと呟いていた事を思い出す。
好きだと、愛していると叫んでいた。
夏油はそれに何か違和感感じたのか、斎藤廉の前に立って無理やり立たせた。