第13章 狂愛
――釘崎野薔薇side――
私達の泊まる部屋であの掛軸を広げるなと騒ぐ夏油。
怖いものが苦手だとは知っていたけど、ここまで徹底して苦手だってなると、よく今まで呪霊を祓って来れたなと思うのが正直な感想。
心霊と呪霊は彼女にとっては違うみたいで、術師としての実力は同期の中では群を抜いて上だから、すごいとは思う。
そんなことを考えながら、私たちは伏黒の部屋へとやってきた。
さっき部屋で夏油が言っていた事を思い出す。
こじつけや都合のいい解釈だとは思ったが、辻褄が合わないわけではなかったし、納得してしまった自分もいるからきっと考え方自体は間違っていないんだと思う。
部屋の扉を開け、中に入る。
木箱はドレッサーの上に綺麗に置かれていた。
「喉乾いたな。お茶飲もう」
「マイペースだな、オマエは」
お湯を沸かしている間にティーパックのコーヒーをカップに入れていた。
しかも3人分用意して。
こういう所、夏油って気が利くのよね。
「あ、釘崎って紅茶の方がよかった?」
「コーヒーでも平気。お砂糖とミルクを入れてくれれば」
「じゃあ、これオマエ用な。私と伏黒は使わんから」
「俺、ブラックって言ったか?」
「あ?いつも飲んでんじゃん、ブラック」
当り前のようにそう発言する夏油。
よく人を見ているというかなんというか。
口は悪い癖に、根っこは優しいし人の気持ちを優先するから、たまに心配になるのよね。
夏油のこういうところ嫌いじゃないしむしろ好きだけど、自分自身に鈍感なところは嫌いかも。