第13章 狂愛
私たちはラックに近づく。
そこには美術部の子達が描いた絵が並べられている。
が、どこも変わった様子はない。
「掛軸を見つけた子と話がしたいんですが……」
「………実は」
またもや教員は歯切れが悪くなる。
眉を寄せ、言い淀んではいるが一度息を吐いて口を開く。
「掛軸を見つけた子は、被害に遭った生徒でして……」
「え?」
「見つけたあの日から、少し様子がおかしくなりまして……」
被害に遭い、不登校になったのはつい先月だと言う。
これは、確実に呪われている確率は高い。
「その子の家、教えてください」
教員が自宅に電話をし、私達が訪問をする事を了承してくれたため渡されたメモ用紙を見ながら、私たちは被害者の家へと急いで向かった。
「……うわー、帰るタイミングここだったわ」
「諦めろ」
伊地知さんの車に乗り込み、その子の家にたどり着いた瞬間ボソッと零れた言葉に伏黒が反応した。
任務脳が働いたため帰ると言う選択肢が頭から削除されていた。
「帰るつもりは毛頭ないけどな」
ここまできたらやるしかないし、ここで帰ったら呪術師としてのプライドが傷つく。
その子の家は5階建てマンションの4階、409号室。
メモ用紙を見なくても分かった。
呪いの気配を感じるから。
「呪われてるわね」
「行くぞ」
「はぁー……」
三者三様ではあるが、私たちは409号室に行くためにエレベータに乗り込んだ。
ゆっくりと上昇する間は無言。
エレベーターってなんで無言になるんだろう。
どうでもいい事を考えながら、私はなにかあった場合すぐに対応できるよう、袖の中に鍵をいくつか忍ばせた。