第10章 人形
「じゃあ、その西崎美優も蘇った死者ってことか?」
≪そこなんだよ。この商売の対象はあくまで"赤子の蘇生"だ≫
「赤子……?じゃあ……西崎美優ってやつは……」
≪悪いけど、僕がそっちに行くまでその子の行動を見張っててくれる?≫
「わかった。何かあったらまた連絡する」
そう言って通話を切った。
補助監督の車に乗り込むが、そのまま待機してもらうように頼み、私は頭の中を整理する。
呪詛師、赤子、死者の蘇生、呪骸、西崎美優。
これは私の勝手な憶測だけど。
呪詛師は、入れ物として死骸を使っているんじゃないだろうか。
そうでなければそこまで区別のつかない人間を呪骸で作れるわけがないんだ。
ああ、だから私は西崎美優を見た瞬間に、違和感を覚えたのか。
呪術師の目で見れば、悍ましさだけがそこにあるから。
五条悟は何もするなとは言ったが、放っておくわけにはいかない。
呪詛師の作った呪骸だ。
一般人にいつ何をするかわかったものじゃない。
私は伊地知さんに再び電話を掛ける。
調べて欲しい事があるからだ。
「伊地知さん、ちょっと調べて欲しい事があるんです。西崎美優のことについてなんですが……」
調べて欲しい事をリストアップし伝えれば、伊地知さんは「なるべく早く調べます」と善処してくれた。
多分、無理難題な事を私は頼んだ気がするが伊地知さんはそれでも調べてくれる気がするから、期待しよう。
「この後はどうしますか?」
「とりあえず、西崎美優の家がどこにあるか知りたいのでちょっとだけ向かってください」
「わかりました」
アクセルを強く踏み、補助監督は車を走らせた。