第9章 領域
生き物としての格が違うどころの話ではない。
なんか、もう、怖い。
それだけしか、私の中にはない。
「誰に言われてここに来た」
いつの間にか目隠しをしている五条悟は、その隙間から瞳を覗かせ富士山野郎を睨む。
今気が付いたけど、五条悟の呪力が大幅に消費されている。
領域展開のデメリットはこれか。
呪力の回復は時間がかかる。
それに伴い術式にも大きな負担がかかり、領域展開後は術式が焼ききれ、一定時間呪力による術式の使用が不可能、のようだ。
だが、そうは言っても。
今の五条悟を殺せるかと言われたら「ノー」だ。
消費したとはいえ、こいつは反転術式が使える。
すぐに焼き切れた呪力を回復するに決まっているし、たとえそうでなくても、今の状態ですら準二級術師並みの呪力量だ。
私はただ、突っ立っているしかできない。
そんなことを考えている私をよそに、五条悟は富士山野郎の頭をボールのように転がしている。
「僕を殺すと何かいいことあるのかな。どちらにせよ、相手は誰だ」
マスクの隙間から見える瞳は酷く怒っている。
ただただ怖い。
怖いしか言ってないけど、本当に怖い。
「はやく言えよ、祓うぞ。言っても祓うけど」
チンピラかヤクザだよ、もはや。
なんか富士山野郎が不憫に思えてきた。
ああ、また同情しちゃった。
私の悪いところが出てしまったな。