第9章 領域
なんて思っている間に、五条悟は自身の目を覆っていた布をゆっくりと外し、そして―――。
「領域展開"無量空処"」
五条悟もまた、領域を展開した。
富士山野郎の領域は五条悟の領域に浸食され、私たちのいる空間はまるで宇宙のようなそれが広がっていた。
私と虎杖は五条悟の領域展開の影響を受けていないけど。
富士山野郎は指一本どころか瞬きもすることなく、いや、何もできずにいるのだろう。
何一つ動きを見せることがない。
「ここが無下限の内側。"知覚""伝達"、生きるという行為に無下限の作業を強制する」
つまり、今この富士山野郎は知覚し肉体に伝達する情報量を無限にまで増大させられ、脳に甚大な負荷がかかっている状態なのか。
五条悟の領域中に入ってしまったら、認識を思考に反映させそれを行動に移すことが不可能ということ。
文字通り、「何もできない」まま、緩やかに死んでいく。
これが、呪術界最強の男。
五条悟の持つ力。
全身に鳥肌が立った。
以前から気づいていたけど。
こいつは私との勝負で、本来の力の何万分の一で戦っていたと言うことになる。
そして私はそれにすら勝てていない。
殺せない。
五条悟を。私は殺すことができない。
「君には聞きたいことがあるからね。これ位で勘弁してあげる」
息の仕方を忘れている私に構うことなく、五条悟は富士山野郎の頭を掴むとそのまま首と胴体を剥がした。
目の前に行われるえげつない行為に、私は息を呑んだ。
嫌な汗が全身に流れる。
富士山野郎の首がもげたところで、五条悟の領域は消えた。
地面に首を投げ捨て、足で踏みつける五条悟はもはや私にとっては怖い存在だ。