第5章 特級
外に出て、私はそのまま地面に倒れ込む。
「はぁ……、はっ、はぁ……」
乱れる息と、暴れる心臓に吐き気が襲う。
雨が鬱陶しい。
「夏油!!」
「ふ、しぐろ……」
「虎杖は⁉」
私の姿を見た伏黒が慌てたように私の元へと駆けてくる。
虎杖は、無事だ。
だけど、置いてきた。
見殺しにしたも同然で。
「ごめん……」
「いや、いい……。もしもの時は俺がアイツを始末する」
「………」
その時。
私も伏黒も同時に建物へと目を移した。
生得領域が閉じたのを感じた。
特級が死んだんだ。
ということは、宿儺は……虎杖は……。
『やつなら戻らんぞ』
いつの間にか、私と伏黒の間にそいつはいた。
眉間に皺を寄せて、唇を噛む。
最悪だ……。
『そう脅えるな。今は機嫌がいい。少し話そう。なんの"縛り"もなく俺を利用したツケだな。俺と代わるのに少々てこずっているようだ』
そう言って、宿儺は制服を破り捨てる。
何をしようとしているのかわからなかったが、次の瞬間には宿儺の手には虎杖の心臓が握られていた。
ぽっかり空いた胸からは大量の血がこぼれている。
『小僧を人質にする』
にやりと笑う宿儺。
宿儺に心臓はなくても生きてはいける。
だけど虎杖はそうじゃない。
代わったら虎杖は死んでしまう。
ぎりっと奥歯を噛みしめた。
私があの時逃げなければ。
『更に、駄目押しだ』
宿儺は手に持っていた自分の指を飲み込んだ。
特級が取り込んでいたものか。
私も伏黒も、緊張の色が濃くなる。
どうするどうするどうする。