第5章 特級
虎杖はベルトで腕を止血しながら自分の中にいる宿儺に助けを求めた。
しかし宿儺はそれを拒んだ。
例え今宿儺が死んだところで宿儺の切り分けた魂は後18もある。
今虎杖と宿儺が代わったら、宿儺は真っ先に伏黒と私を殺し、その後に釘崎を殺すと言った。
「んな事俺がさせねぇよ」
『だろうな。だが、俺にばかり構っていると、それこそ仲間が死ぬぞ』
特級が大きく息を吸い込み、それを私たちに向けて放つ。
呪力を飛ばしただけでコンクリートの床が抉れるほどの威力。
嬉しそうに楽しそうに笑う目の前の特級に、私は少しだけ落ち着きを取り戻した。
「伏黒、夏油!!釘崎連れてここから逃げろ!!3人がここを出るまで俺がこいつを食い止める。出たらなんでもいいから合図してくれ。そしたら俺は宿儺に代わる」
「できるわけねぇだろ!!特級相手に片腕で!!」
「それに私らが逃げるまでおまえが死なないって保証もねえだろうが!!」
「よく見ろって。楽しんでる。完全にナメてんだよ、俺達のこと。時間稼ぎくらいなんとかなる」
「駄目だ……!!」
「伏黒!!!頼む」
虎杖の表情は何かを諦めたような、不安の入り交じったそんな顔をしていて。
宿儺と代わることは虎杖にとっては賭けだ。
被害を出さないために、私たちを逃がそうとしている。
「伏黒、行け」
私は、鍵を手にし構える。
虎杖が何か叫んでいたけど、耳には入らなかった。
私はこの中で階級が高いんだ。
私が逃げてどうする。