第5章 特級
「釘……崎?」
なんでだ。
どういうことだ。
だって伏黒の式神、なんの反応もしなかったじゃないか。
伏黒の視線の先をたどった。
玉犬・白は、壁から頭だけを出している状態で血を流していた。
破壊、されている。
音もなく。
「虎杖!!夏油!!逃げるぞ!!釘崎を探すのはそれからだ!!」
しかし時は既に遅かった。
私たちの目の前に、それはいた。
いつからいたのか。
そんな事考えられないほどまでの恐怖が襲う。
間違いない。
こいつは特級だ。
体が、指一本、動かせない。
「うあ"ああああああ!!」
虎杖は持っていた屠坐魔で攻撃を仕掛けた。
しかし、私の目に入ったのは、手首から先のない虎杖の腕だった。
数秒遅れて何かが床に落ちる音がした。
ぼんやりしてちゃんと見えないけれど。
床に落ちたのは虎杖の手だ。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
ただ恐怖だけが私を支配する。
震える足に鞭を打ち、鍵に手を伸ばす。
この中で私が一番強いはずなのに。
準一級のはずなのに。