第4章 対面
口を開いて、言葉を吐きだす。
「味音痴かよ。食わず嫌い王決定戦で優勝できるぞ」
「え、そう?」
「褒めてねえよ」
いや、そこじゃねえだろ。
もっと他に言うべきことあんじゃねえのか。
虎杖も虎杖でどこか嬉しそうだし。
夏油って意外と天然なのか。
「てか、名前まだ教えてもらってないんだけど。あんたの」
思い出したように虎杖が夏油に名前を尋ねる。
呪術界では夏油という人間はあまりにも有名だ。
その為に身内であるこいつもまた自然と名が知れ渡ってる。
高校1年で準一級呪術師という等級よりも、だ。
「夏油」
それでもためらいもなく彼女は自身の名を虎杖に言った。
夏油という存在に、彼女は誇りを持っている。
その気高いプライドは、俺からしてみれば強い人間の象徴だと思った。
「よろしくな夏油」
差し出される手。
それには戸惑いを見せる夏油。
どうやら、ためらいもなく手を差し伸べてきた虎杖の行動が予想外過ぎたらしい。
本当に小さな変化だけど、夏油は小さく笑って虎杖の手を握った。
その小さな笑顔に、なぜだか俺は安心してしまったのだった。
あの後、高専を案内してほしいと虎杖が夏油に言った。
最初こそ「面倒」とか言っていたけど、何度か同じ問答を繰り返し、最終的に折れたのは夏油だった。
初対面なはずなのに、二人の息はピッタリだった。
部屋に戻って俺はベッドに潜る。
意外と虎杖と夏油はお似合いなのかもしれないなとか、思いながら、ゆっくりと目を閉じた。