第26章 事変
「……悪いな、夏油」
「謝んな。人に頼るのが苦手なお前が頼ってきたんだ。安心しろ。私は死なない。オマエも死なない」
私は伏黒の周りにペンタゴンを作り、術式を発動させた。
呪力の圧を上げれば中の酸素がなくなり真空状態になる。
しかし、圧はそのままに呪力量だけを上げればバリアくらいにはなるだろう。
こんな繊細な呪力操作、やったことがない。
奥歯を噛みしめた私は大きく息を吸ってゆっくりと吐いた。
「来いよ、私が相手になってやる」
瞬間、私の横を風が切った。
魔虚羅の拳が頬をかすめたのか、それだけで肉が抉られた。
「……っ!!」
ぶしゅっと音を立てて血肉が地面に落ちる。
全然見えなかった……。
これだけのパワーだ。
伏黒を守るために作ったバリアなんて簡単に壊されたに違いない。
案の定、バリアは破壊され守っていたはずの人間は壁に寄りかかりぐったりと頭を垂れていた。
その頭からは血が噴き出している。
息をしているか確かめたいけど、できそうにないや。
「ふざけんなよ!!こんな……!!クッッソ!!」
細身野郎は魔虚羅の圧にやられたのか、その場を動くことができずにいる。
さぁ、どうする。
私に残された呪力はほんのわずか。
領域展開できるほどの呪力はない。
「……無理ゲーを好んでする程ゲーマーじゃないんだけどな、私は」
口の中に溜まった血を吐き捨てる。
ここで私が死んだら伏黒も死ぬ。
心臓貫かれようが頭を吹き飛ばされようが意地でも生き抜いてやらないと。
私は鍵に呪力と呪力の圧を込め、魔虚羅に投げた。
「"開錠"!!」
魔虚羅に向かって投げられた鍵は空中で粒子程の大きさに分解され、魔虚羅を囲んだ。