第20章 世界の終わりに
「うーん……」
その後、どうなったのか覚えていない。
ただ、コハロンが目を覚ました時は、ヒカックとぎぞくとぽんPがそこに倒れていて。大丈夫か、と声を掛けて起こし、ここまでの話をし合った。
だが他のメンバーも、あのあとどうなったのか、どうしてここにいるのかはっきりと覚えてはいなかった。ただ、自分たちは何者かに抱えられて、地上に戻って来たということが分かるだけ。
「じゃあ、アツクラはもうなくなったりしないのかな……?」
とヒカックが辺りを見回す。周りはいつも通りのアツクラの世界で、まえよんメンバーは拠点の橋の上にいた。
「いつも通りの景色だけどなぁ」
とコハロンが答えると、いや、おかしな点がある、とかなり真面目な口調でぎぞくが切り出した。
「コハロンさんの家が水浸しなのはおかしい! バグってる世界だ!」
「いいって! これは元々だ💢」
ただのボケだったのでコハロンが素早く突っ込むとどっと笑いが湧く。
「そもそも家を直さないアナタが悪いでしょ」
とぽんPの冷ややかな言葉までがいつものまえよん日常だ。
「はい、ということで今回は、アツクラがバグった世界から脱出せよ、でした!」
「え、ちょっと待って?」
ヒカックが締めの言葉を言い始めたのでコハロンが遮る。どうしたんだと言われる中、コハロンだけは覚えていた。
「ねぇ、ウパちゃんは? 最後ウパちゃんと一緒に撮ろうよ」
「え、ウパちゃん……?」
ヒカックはきょとんとし、ぽんPも顔をしかめている。とそこに、ぎぞくが唐突に声をあげた。
「あ、あそこにいるのそうじゃない?」
「え?」
とぎぞくが指す方向の岸辺には、一匹のピンク色のウーパールーパー。くるりとこちらを振り向いたのち、ウーパールーパーはぽちゃんと川に入って行った。
「いや、あれは普通のウーパールーパーだろ」
「コハちゃん、何を言ってるの?」
ヒカックを中心に本当に何も分からないといった様子。コハロンはさすがに焦ってきた。
「なんで……? 俺だけウパちゃんのことを覚えている世界線か?」
ドッキリなのか、とも考えたが、結局ネタばらしもないまま撮影は終わった。コハロンは、先程ウーパールーパーが飛び込んだ川を見やった。そこはあまりにも、静かな風景だった。
「またね、コハロン!」
快活な少女の声が、聞こえた気がした。
おしまい