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秋の夜に置いてきた恋【イケメン戦国】

第2章 芽生える恋


秀吉「ごめんな。」


不意に謝られ、さくらは驚き、思わず秀吉の髭を剃っていた手を止めた。どうして秀吉が謝るのか、理由がわからなかった


秀吉「俺も貧しい家の出だから、お前の気持ちは分かる。この時代は、命が軽く扱われている。飢えに苦しんでいる人がたくさんいるし、病に倒れても薬すら買えない家もある。だからこそ、お館様の天下統一を成し遂げ、この時代を切り開くんだ。今はまだ救えない命も、いずれは救える時が来る。そう信じている。」


さくら(…っつぅ)


この混乱の時代を変えようと、命を懸けて戦っている秀吉の覚悟が、静かな声の中に宿っていた。

さくらはいつも、秀吉の優しさや強さに救われていたが、この時、初めて彼が抱える大きな責任を感じた。

(この国に秀吉様はなくてはならぬ方だ。)


秀吉「だから、さくらもう少し待ってくれ。」


さくら「命を救って頂いたうえに、勿体ないお言葉でございます。」


気丈に振さくらおうという出た言葉とは裏腹に、1年前からずっと心の奥に押し込んでいた涙が、自然と溢れ出した。


あの日以来、さくらは泣いていなかった。

心配かけまいと、秀吉の前では泣かないと決めていたのだ。

それでも、彼の心がさくらの心を温かく溶かしていった。

「秀吉さ…」声にならない言葉が喉に詰まり、ただ涙が頬を伝う。

さくらは持っていた手ぬぐいで涙を拭おうとしたが、秀吉様が手ぬぐいを奪って涙をぬぐってくれた。


秀吉「さくら…。」


秀吉様の左手が肩に置かれ右手は手ぬぐいで涙を拭ってくれた。


さくら(…このまま胸に寄りかかりたい)


と心に浮かび欲張りな自分の気持ちを押し込めた。


さくら(阿呆か。)


救われた命の重みを改めて感じながら、これから先も、この命は秀吉様のために使うと決意を新たにした。


彼の戦いを支え、いつか彼が描く未来を共に見届けるために私は生きながらえたのだ。


そう冷静に頭の中で処理をしていると、また秀吉様が甘い声でつぶやいた。


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