第2章 芽生える恋
☆さくら目線☆
女中として働き始め、早くも1年が経った。
城内での忙しい日々はあっという間に過ぎていき20歳になった。
川辺で命を絶とうとしていた私を、秀吉様は何の躊躇もなく救い上げてくれた。あの日のことが、まるで昨日の出来事のように今も心に焼きついている。
私にとって彼はただの武将ではない。命を救ってくれた恩人であり、心の支えだった。
髪結いの仕事でたまに秀吉様の部屋を訪れることもあった。
そんな時、彼はいつも優しく私に言葉をかけてくれる。
女中の仕事でお給金もいただいてるのに、二人きりの時やお使いを頼む時、彼は毎回のように小遣いを渡してくれた。
秀吉「こっそり茶屋で甘味でも食べるといい。少し貯めれば、着飾るものも買えるだろうから、好きに使え。」
秀吉様のその言葉に甘えた。
正直お金が欲しかったわけじゃないが、特別扱いされる事が自分の心を満たしていった。
さくら(いつか、秀吉様に何か贈れたら・・・いや、そんな…。おこがましいかな)
もっと早く稼げていたらとふとよぎったが頭から消した。
田舎の母親に薬を届けたかったが、奴隷として売られた翌年に母は死んだ。
父の消息も不明だ。
この世は理不尽な事ばかりだ。
食う寝るに困らぬようになればその瞬間金は余っているのだ。
私は秀吉様から貰った金で初めて紅を買った。
ある日、秀吉様の部屋を訪れた時のこと。普段と変わらぬ柔らかい表情で私を迎え入れてくれた。