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秋の夜に置いてきた恋【イケメン戦国】

第1章 出会い


☆さくら目線☆

やがて、さくらの目の前に立派な城が現れた。高くそびえる城壁と、広がる敷地。


その壮大さに息を飲んだ。かつて見たことのない光景だった。こんな場所に、自分が足を踏み入れることになるとは夢にも思わなかった。

足元の汚い草履が、自分の存在をより一層卑しく感じさせた。


「ここが、お前の新しい居場所だ。」秀吉の声が響く。


湯浴みを許され、長い間まとわりついていた汚れと臭いを洗い流した時、さくらはようやく自分が人間に戻った気がした。


湯気が立ち上る湯船に浸かり、冷え切った身体がじんわりと温かさに包まれていく感覚。


心まで溶けていくようだった。新しい衣をまとい、髪を整えると、鏡に映る自分が別人に感じられた。


あの川辺での絶望的な日々から抜け出した今、自分は生きている。

そして、この命は秀吉様のものだと心の中で静かに誓った。
気づいたら19歳の誕生日を迎えていた。


女中や小間使いとして働くことになり、城内のあちこちを掃除したり、台所で雑用をこなす日々が始まった。


秀吉様は「無理に働かなくても良いが、居場所が必要だろう?」と仕事をくれた。


女中の仕事では、なかなか秀吉様を見る事も叶わなかったが、そばにお仕えしたくて髪結いやお使いの仕事も増やした。


前の生活と比べればまるで天国のようだった。
毎晩、温かい寝床で眠ることができ、食事も毎日十分に与えられる。

誰かの手荒い扱いに怯える必要もない。


女中になってすぐは、秀吉様が連れてきた娘と周りの女中達から特別扱いされていたが、時が経つにつれ馴染んで来た。


たまに私の顔を見に来ては


秀吉「精が出るな…根詰めすぎるなよ」


とくしゃっと頭を撫でてくれた。


その大きな手は温かく、ずっと置いて欲しいと思った。
見送る大きな背中に、香りに…城に来たあの日を思い出しいつも胸がいっぱいになっていた。


(秀吉様…今日は元気そうなお顔だったな)

そんな些細な事がさくらの毎日を明るくしてくれた。
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