第10章 宝物(政宗編)
宴の席にもさくらはいなかった。
政宗はずっとそれが気がかりだった。
宴も終盤に差し掛かると、空になった膳を下げに、さくらが政宗のそばに現れた。
政宗の袖をつんと引くと、さくらは政宗に耳打ちした。
さくら「ぁの…二人でお話がしたいのですが…」
政宗「おぉやっと来たか。すぐ行くから部屋で待っていてくれるか?」
悪阻は酷くなかったが、秀吉が心配するので宴会の席にもさくらは出席出来なかった。
さくらは政宗に会える喜びと、これからの告白の不安で緊張がピークだった。
政宗は本当にすぐに来た。
政宗「さくら待たせたな。いや、俺の方が待っていた気がするぞ。宴の席に来ると思っていたんだが…。」
さくら「政宗様…お会いしとうございました。今日は満月じゃないけど、少し散歩しませんか?」
政宗「ふっやっと素直になったか」
雪がちらつく中庭。月明かりが雪を照らし、幻想的な光景が広がっていた。私から、政宗様の手を握った。こちらを振り返りニッと笑うその顔が美しく光っていた。
私は何度も言葉を飲み込み、鼓動が激しくなるのを感じながら、ようやく口を開いた。
さくら「政宗様…文をありがとうございました。」
胸から取り出すと、さくらはぎゅっ。と政宗様に抱き締められた。
「お部屋のご案内も出来ずごめんなさい、宴の席でも本当は傍に…」
政宗「なぁ、やはり寒くないか?手が震えている。部屋に戻ろうか。奥州の酒を持ってきたのだ。」
すっぽり包まれた腕の中から政宗の顔を覗き込むと、顎を軽く持ち上げられちゅっと口づけされた。さくらは全身が熱くなった。
部屋に戻り、政宗に向かい合い座った。