第10章 宝物(政宗編)
新年を迎え、政宗が安土城に到着した日のことだった。
外で秀吉とさくらが政宗を待っていた。
秀吉の羽織を着て、肩を引き寄せられるように秀吉の横にいる様子を見て、政宗は妙な気持ちになった。
秀吉に牽制されているかのような気持ちになった。
近くまで行くと、綺麗に化粧をして髪を結ったさくらがいた。たった二ヶ月だったのに、また一段と綺麗になった。
政宗「さくら元気にしてたか?」
さくら「はい。寒い中お疲れ様でございました。お部屋を温めて準備しておりますので、お休みください。」
秀吉「政宗、よく来てくれた。さくらはもう部屋に入れ。」
政宗は別の侍女に部屋を案内され腰を下ろしたが。
侍女「夕餉まで少しお時間ありますのでお休みください。」
政宗「なぁ、悪いんだが、さくらを呼んできてくれないか?」
侍女「…か、畏まりました。」
その時どかどかと廊下を歩く音がした。
(チっなんで秀吉なんだよ)
秀吉「邪魔するぞ。政宗。」
恐らくさくらと俺のことは、コイツの耳に入ったのだろうと勘で察した。
政宗「俺はさくらを呼んだはずだが」
秀吉「後で必ずさくらは来る。お前の為に準備を張り切りすぎて少し疲れてるのだ」
政宗は秀吉が何故か苛ついているように見えた。
政宗「そうか。それは悪かったな。さっきは元気そうに見えたが、ずいぶんと過保護な兄貴だな」
秀吉「お前に会えたのが嬉しいんだろう。」
政宗「まぁな…。」
秀吉「で、お前はどうなんだ?さくらに会いたかったのか?」
政宗(答え方に気をつけないと…新年早々こいつに殴られるのは御免だ。)
政宗「秀吉。お前こそどうなんだ?さくらの気持ちに気付いてやったのか?」