第9章 告白(政宗編)
あの秋の事件以来、秀吉とさくらの距離は縮まっていた。
さくらは侍女になってから、秀吉の部屋の水差しの花を毎日替え、秀吉と前以上に良く話すようになった、話題は、家康に習った薬草学の話や、三成に薦められて読んだ本にまで及び秀吉は退屈しなかった。
秀吉が戦に行くときは願掛けしたお守りを持たせてくれたり、頼んだお使い一つにしてもさくらは気が利いていた。
秀吉は彼女の成長が嬉しく、頼もしくもあった。
以前はさくらの身を案じ、心配していたのに、最近では、頼りになる妹が甲斐甲斐しく兄の世話をしてくれているようだ。
お館様の先回りをして事を成す自分に似ているなと感じる部分もあり、秀吉は居心地が良かった。
ある日、秀吉が「茶を淹れようか?」と言ったら、以前なら遠慮していたさくらが「いただきます」と素直に座った。
秀吉は、茶を淹れながら彼女をじっと見つめた。
秀吉「また少しふっくらしてきたな…」
茶を飲む所作も美しく、俺が川べりで拾った奴隷の女の姿はどこにもなかった。
色香が漂い、恥じらいを見せながらも挑戦的な目で
さくら「秀吉様?…そのように見つめられると、流石に飲みにくいですよ。」
さくらが顔を赤らめながら言う。
そのいじらしさに、俺の心に奥に秘めていた質問をついに切り出した。
秀吉「なぁ、…さくらは、政宗のことが好きだったのか?」
さくらは遂にこの質問をされる時がきたかと身構えた。
過去の秀吉への気持ちに向き合い、今の政宗への気持ちを大事にしたかった。
さくらは「流石…秀吉様にはお見通しですか。」
さくらは冗談っぽく笑っているが、拍子抜けするほどあっさりと肯定されて秀吉は少し焦って尋ねた。あの事件以来、政宗への想いを吹っ切ったのだと勝手に思っていた。
秀吉「そ、それで…政宗には気持ちを伝えたのか?」
さくら「ぃぇ、政宗様をお慕いしている気持ちはお伝えしておりませんが、政宗様はお気づきのようです。」と答えた。
秀吉は内心複雑な思いに包まれた。
秀吉「なぁ、さくら…政宗は良い男だが、兄貴分としてはお前が心配だ。」
さくら(ご自分のことには疎いんだよな…)