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秋の夜に置いてきた恋【イケメン戦国】

第8章 見送り(政宗編)


☆政宗目線☆



政宗は、さくらが見送りに来なかったことが胸に棘が刺さったようにチクリとつっかえた。

(なぜ来ない…?)


さくらは、昨日部屋にも挨拶に来なかった。政宗は既にそれが少し腹立たしかった。


(面倒を見てやったのに!)
などという気持ちからではない。


奥州に行けばしばらく会えなくなるのだから素直に「寂しいです」と顔見せて一言も伝えてくれても良いものを…。


(俺は…傲慢になっていたのか?)

ふと自分に問いかける。


あの夜、さくらとの間に何か特別なものが生まれたと感じたのは、俺の勘違いだったのかもしれない。



俺の方だけが何かを期待していたのか。
ふっ…。こんな事普段ならないのにな。



唯一、城を出る前に目にしたのは廊下を走るさくらの後ろ姿だった。侍女として、秀吉のそばで世話を焼くようお館様に命じられたそうだ。


あの事件からたった2日だったが、まぁ、元気になったならそれでいい。

安心して奥州に戻るとしよう。


深く追求することはなく、政宗はそう自分に言い聞かせさくらのことは心にそっとしまいながら、馬にまたがった。


秀吉や三成に見送られ、最後にもう一度、城を振り返ると、城の上からこちらを見ているさくらと目があった。


その姿は小さくしか見えなかったが、こちらが気づいた事にさくらも気付いた様子でㇵッとしていた。


思わず笑いがこみ上げて、吹いてしまった。


(ぷふっ…なんだよ…笑)



それを見て、さくらは観念したのか、ペコペコお辞儀しながら、大きくこちらに手を振っていた。


(なんだ…見送りたいなら来ればいいものを…。)


と胸に浮かんだが、寂しくなるから来れなかったのか。とさくらの性格を思い出し納得した。


秀吉が近くにまだいたので、城に背中を向けてさくらに向けてヒラヒラと手を振ってやった。



政宗(向こうに着いたら、文でも書いてやるか。)
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