第8章 見送り(政宗編)
☆秀吉目線☆
秀吉は政宗を見送りながら、胸の奥にある複雑な思いを押し隠していた。
政宗が馬にまたがり、去っていくその姿を目で追いながら、ふと口を開いた。
秀吉「さくらが世話になったな。次は戦だな。頼むぞ」
政宗は振り返り、いつもの無骨な笑みを浮かべて応えた。
政宗「…おぉー、秀吉こそ、もうすぐ例の大名討伐に向かうのだろう?無事でな。…そういえばさくらの様子はどうだ??」
秀吉は少し間を置き、目を伏せた。
俺はあんなことをさくらにさせてしまった自分が情けなかった。
秀吉「さくらは…まだ心の傷は癒えていないだろうが、元気そうだ。時間が解決するだろう。俺がそばにいる限り大丈夫だ」
政宗は軽く頷き、目を細めて笑った。
政宗「では次の戦に備えて、達者でな秀吉…。」
馬を駆け、遠ざかる政宗の背を見送りながら、秀吉はふと溜息をついた。
さくらがなぜ、政宗の見送りに来ないのかが気になった。
義理をかくような奴じゃないと思うが…。
体調は良さそうだったが、気持ちがすぐれないのか、よっぽど忙しかったのかあるいは…。
あの夜の事件のまだ二日しか経っていない。
だが、さくらは、何かを吹っ切ったような。すがすがしい顔をしていた。
心配事がなくなったからかと思っていたが、本当にそうだろうか?
ならば、なぜ政宗の見送りに来ない。
さくらの気持ちが分からなくなり、秀吉は頭を抱えた。
(アイツは…アイツはもしかして
もしかして、政宗の事を好きだったのか?)
恋心があるのにあの事件をきっかけに、気持ちを捨てたのだとしたら?
政宗の見送りに来ないのも納得がいった。
俺なんかのために…。
どこまで自分を犠牲にするんだ。
秀吉はとぼとぼと城にかえった。