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秋の夜に置いてきた恋【イケメン戦国】

第5章 事件


さくら「あおい!!!」なぜか思わず声を潜めてしまった。大きな声を出せば秀吉様の家臣が来てくれるかもしれないのにも関わらず。



あおい「やっぱり、あんただったのか。分かってたのね。さくら」



さくら「まって。あおいやめて!秀吉様を傷つけないで」


さくらは声を潜めたまま叫んだ。
どこかでこのままあおいが諦めて逃げて欲しいと思ったからだ。


あおい「無理よ。こっちに来ないで。同罪にされるわよ」


初めて持った刀は重かった。

後ろに隠していたむき出しの刀の柄をさくらは両手で持ち直した。柄の下の方を持つと重いけど威力が増すと三成様に聞いたのを思い出した。

さくらは意外と冷静な自分に驚いた。

あおいが秀吉の部屋の襖に手をかけるのがスローモーションに見えた。

そこに振りかぶり、全体重を乗せ短刀を持った腕に、振り下ろした。

あおいの手首が皮と僅かな肉で繋がっているのか、ぶらんとなっている。


バタッ。

さくら(こんなに切れるの?)


あおいの倒れる音が耳に届くよりも早く悲鳴が聞こえた


あおい「いやぁぁあああああああ」



苦痛に顔を歪ませ、あおいは膝から崩れ散った。


血しぶきが、廊下にも、秀吉様の襖にも飛び散っている。



あおいがあまりに痛そうで、見ていられなかった。ここで命を救ってもあおいの命は…
気づいたらあおいの首に刀を振り下ろしていた。


さくらは自分の白い襦袢を真っ赤にそめて
横たわる友人を見ていた。


自分の残虐な行為も、目の前の血だらけの友人も、愛する人が殺されかけた事実も全てが恐ろしくなり、ようやく自分の悲鳴が出た。
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