第3章 裏切りの香り
☆あおい目線☆
もうすぐだ。
もうすぐ、すべてが終わる。
私はとうに命などを捨てている。
唯一残っているのは、戦で無残に殺された旦那への恨み。その恨みだけが、私を生かしている。
復讐の刃を、秀吉の喉元に突き立てる日を、ずっと待っていた。
秀吉に近づくために、彼のお気に入りであるさくらにも接近した。
何かに取り憑かれたかのように、私は彼女に取り入った。明るく振るまい、彼女の世話を焼き、信頼を得た。
私は心の中の夫に呼びかけた。あなたの仇を討つその日が、ついに来るのだと。
毎日、頭の中で段取りを繰り返し、シミュレーションした。
時折、さくらが何かを感じ取っているのかもしれないと、不安に襲われることもあったが、しかし、そんなことはどうでもいい。私にはもう後戻りできない。命を投げ捨ててでも、この復讐だけは成し遂げなければならないのだ。
すべてが終わったら、私も夫のもとへ行く。それで良い。
さくら…。ごめん
知ってる。秀吉様はあんたの大切な人んだよね。
知ってたよ。この負の連鎖はいつ終わるんだろ。
私もさくらに恨まれ殺されるのかもしれない。
その時は受け入れる。