第5章 初めてのデェト
楽しい時間はあっという間だった。
タケルくんも凄く嬉しそうだった。
あんな顔をした彼を見るのは初めてだから。
タケルくんをそんな顔にさせる中也くんが凄いと思う反面、少し狡いとも思ってしまった。
タケルくんとは私の方が長い付き合いだからだ。
少し嫉妬はしてしまったが、2人が特訓という名の遊びをしている姿を見てほっこりした。
中也くんとの別れ際、突然手を引かれ耳打ちをされた。
「デェトのこと忘れてねぇよな?」
いつもより少し低いトーン、そして妖艶な笑みを浮かべる彼にドキドキした。
頷くと、彼は満足そうに帰って行った。
仕事が終わり、すぐに中也くんに連絡をした。
返事はすぐ返ってきた。
そして、デェトの日程が決まった。
明後日だ。
それは私の誕生日でもあった。
この日はたまたま仕事が休みで、特に予定もなかった。
なんなら自分が誕生日であることすら忘れていた。
日程を決めてから気付いたのだ。
こんなに誕生日が待ち遠しいのは子供の頃以来だ。
胸を弾ませ、家へと帰ろうとしたときだ。
突然背後に気配を感じた。
知っている。この気配は、、、、、
??「やぁちゃん!今日は随分ご機嫌だね?」
"太宰くん。またサボり?"
太宰くんだった。
いつも突然現れるので、たまに吃驚するがだいぶ慣れた。
太宰「違うよ!可愛いちゃんが帰り道に怖ーい人に襲われないか心配だったのさ!」
"ふふ、ありがと。"
太宰くんは呑気に云っているが、きっとこの前私が組合に捕まったこともあり、心配で迎えに来てくれたのだろう。
そんな優しさがあるから、女性は彼に夢中になるのだろうと1人で納得していた。
太宰「それで?なにか善いことでもあったのかい?」