第2章 一虚一実
帰路の途中、街路樹の下に臨也と私の姿が見えたからかセルティはバイクのヘッドを変えこちらへ向かってきた。
「俺、あんたが正義の味方になったなんて聞いてなかったけどなぁ。」
セルティは何も言わない。
「優秀な運び屋に仕事を頼んだはずだったんだけどなぁ。」
『前に飛び降りた子もおまえのせいか?』
PDAに現れた文章を読むと、臨也はしょうしょう大げさに声を上げる。
「まさか!情報屋の折原臨也はそこまで悪人じゃないとおもうよ。…死にたがってる人を引き止めるほど、善人でもないと思うけど?」
あきれたのかセルティは私にだけばいばいと手を振ると、バイクを走らせた。私またばいばいとセルティに手を振り返す。
「楽しかったぜ。優秀な運び屋さん…」
まるで馬の鳴き声のような音が、夜のしじまに響く。
ふと、猫が一匹見つめて一つ小さく鳴いた。その言葉にはっとすると、臨也の腕をつかみ無理やり場を去ろうとする。
「どこ行く気?」
質問に答えず早足で歩く。早く家へ帰らなければ静雄に見つかる。
二人の喧嘩に巻き込まれたくはない。ましてや、今日の静雄は機嫌が悪い。
「帰る?」
「うん。」