第1章 開口一番
朝日が昇り、鳥の声が微かに聞える頃に、私の一日は始まる。
私はこの記録を書き記す。その意味は、私の記憶として、思い出の一部としてとっておきたいからだ。今まで彼の物を勝手に使っていたが、とうとう彼も懲りたらしく新しいのを与えてくれた。
セルティみたいに。
今これを読んでいるということは、私の思い出の一部、記憶の一部を把握したいということだろうか?
いや、別にダメだと言っているわけではない。ただ、それはどうしようもなく不可解で、あり得なくてそして、現実だということを言いたかった。
ま、私がいる時点で現実とはかけ離れているかもしれない。なぜなら、私、マリア・ゲルシャーマンは人ではない。
新羅や彼曰く、バンシーの血を引くものだそうだ。
何故自分で断言できないか。それは、彼と出会ったころの記憶しか持ち合わせていないから。
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