第1章 目の前の友人は、怖い話を始めた。
タイキくんは病院に運ばれて、男は逮捕されたの。
男は前科持ちなんだって。
うん、あの幽霊の言ってた通り、女の子を殺した前科があったの。
その女の子があの幽霊だったのかは、私は知らないけどね。
そもそも、その幽霊だって、本当にいたのかな?
幻覚だったのかもしれない。
集団幻覚ってあるっぽいし。
タイキくんがストレスで、イマジナリーフレンドを作っちゃった可能性だってあるし。
……でも、ロマンがあるよね。
仲良くしていた幽霊が、タイキくんを助けようとしていたって。
あんだけ長靴を脱ぐのを嫌がっていたのに、タイキくんが殺されそうになったら、這ってでも助けようとしたんだよ?
自分を殺した男に立ち向かおうとするだなんて、私にはできないなぁ。
あ、タイキくんは生きてるよ。
義足で生活してるって。
内蔵もやられちゃったから、まともな生活が送れているかはわからない。
でも、あの事件の影響で、精神的に参っちゃってさ。
小学生だろうが大人だろうが、あんな体験したら辛いよね。
川とか、男の人が怖いんだって。
生きていて良かったーって、素直には喜べないよね。