第1章 目の前の友人は、怖い話を始めた。
タイキくんはその時、やっと女の子が幽霊だってわかったの。
「……きみ、しんじゃったの?」
「……うん。ずっと前に」
「そっか……」
死因を聞く余裕なんて、当時のタイキくんにはなかった。
聞いておけば、少しは違っていたのかもしれないね。
ある日の夕方、タイキくんはいつも通り、幽霊とお喋りしていたの。
「がっこうで、おっきいあさがおをそだてるんだ―!おしばなにして、もってくるね!」
「ありがとう……あっ」
笑っていた幽霊の顔が、強張った。
「どうしたの?」
タイキくんは、幽霊が見ているほうに顔を向けたの。
そこには、知らない大人が立っていた。
二十代くらいの男の人。
「ごめんねー、ちょっと道を聞きたいんだけど」
男の人は困っているのか、眉を下げてタイキくんにそう言ったの。
「タイキくん、ダメ。逃げて」
幽霊が泣きそうな顔をしながら、タイキくんを止める。
「あの人、私を殺した人だから」
「ひっ!?」
タイキくんはすぐに逃げた。
でも、小学生が男の人の力には勝てないよね。
すぐに掴まっちゃったの。