第1章 目の前の友人は、怖い話を始めた。
タイキくんは幽霊って気付いていないからさ、その子と遊ぼうとしたの。
でも、その子は動けないから。
「ごめんね、動けないの」
「なんで?」
「わからない」
幽霊は悲しそうに目を伏せた。
タイキくんは、その子がどうやったら動けるようになるのか、いっぱい考えたんだって。
数日考えて、長靴が原因だって思ったみたい。
「そのながぐつ、ぬげる?」
タイキくんのその言葉に、幽霊は首を横に振った。
「やだ。脱ぎたくない」
「なんで?」
「これ、お姉ちゃんが誕生日にくれた長靴だから」
幽霊にとっては、肌身離さず身につけておきたい物だったらしいよ。
「……そっか」
タイキくんは幽霊の気持ちを最優先にしたの。
優しいよね。
タイキくんと幽霊は、その後も交流が続いたんだって。
他の人から見たら、長靴に話しかけている小学生だけどね。
タイキくんと幽霊が知り合ってから何か月か経つと、タイキくんはあることに気付いたの。
「ずっと、おなじふくをきてるんだね」
「……家に帰れてないからね」
そもそも地縛霊だから、家に帰れないんだけどね。
動けないんだからさ。
タイキくんは、女の子を家に帰らせたいと思ったみたい。
だって、幽霊が悲しそうな顔をしたんだよ?
そりゃあ、誰だって同情くらいするでしょ。