第1章 目の前の友人は、怖い話を始めた。
その場所で、河川敷に来た時に見つけた長靴を、知らない女の子が履いていたからね。
野ざらしにされていた靴って、ぶっちゃけ汚いし、虫とか入ってそうで嫌じゃない?
でも、女の子は長時間ほったらかしにされていた長靴を履いていたの。
タイキくんは、忘れ物の長靴が持ち主の手元に戻って、安心したんだって。
女の子は、ジーッと長靴を見下ろしていたらしいよ。
それから数週間経った頃、タイキくんはお兄ちゃんと喧嘩しちゃったみたいで、泣きながら河川敷に来たの。
「なんで泣いてるの?」
河川敷には、この前見かけた長靴の持ち主が立っていた。
その子は心配そうにタイキくんを見ていたの。
「ぐすっ……おにいちゃんとケンカしたの……」
タイキくんは涙を拭いながら答えた。
そしたら、女の子はタイキくんに手招きしたの。
タイキくんが女の子に近付くと、女の子はタイキくんの頭を撫でたんだって。
「はやく仲直りしないとね」
「……うん」
あ、もう気付いていると思うけどね。
この女の子、幽霊だよ。
タイキくんには見えるみたい。
ボランティアの人が動かせなかったのも、この幽霊が原因なんだよ。
地縛霊ってやつ。