第10章 わすれもの
蜂楽に合わせる顔がない。
玄関の鍵開けっ放しにして、判りやすいところに置いとくから勝手に取っていってね、じゃ、ダメかなぁ。
でも、さすがにずっと鍵開けとくのも不安だし。
それに、そんなことしても……
蜂楽は勝手に……部屋にあがってきそう。
薬が効いてきて……すごく……眠い。
✢✢✢
「(あれ……寝てた。)」
一階からインターホンの音がして起きた。
ゆっくりと階段を下りて、モニターを確認すると。
カメラに顔を近付けて、子供みたいに変顔して遊ぶ蜂楽が映っていた。
「(え!?はやっ!!部屋着で大丈夫かな…。)」
薄手のカーディガンを羽織って、私は玄関を開けた。
「えっと……早かったね。部活、は?」
「昨日の負け試合で3年引退した区切り、今日は部活オフなりぃ♪
夢ちゃんの熱も心配だったしぃ!だいじょーぶ?」
「うん……今はとりあえず微熱くらいだと思う。」
「よかった!早く元気になぁれ!これどーぞ♪」
蜂楽は、スポーツドリンクとアイスの入った袋を私にくれた。
本当に、清々しいくらい……
いつも通りの蜂楽だ。