第10章 わすれもの
蜂楽に合わせる顔がない。
玄関の鍵開けっ放しにして、判りやすいところに置いとくから勝手に取っていってね、じゃダメかなぁ。
でも、またずっと鍵開けとくのも不安だ。
それに、そんなことしても……
蜂楽は勝手に……部屋にあがってきそう。
薬が効いてきて……すごく……眠い。
「(あれ……寝てた。)」
インターホンの音がする。
モニターを確認するために一階に降りると。
カメラに顔を近付けて、子供みたいに変顔して遊ぶ蜂楽が映っていた。
外はまだ明るい。
想定してたよりも早い訪問に、焦る。
「(え、早っ…!?部屋着で大丈夫かな…?)」
薄手のカーディガンを羽織って、玄関を開けた。
「えっと……早かったね。部活、は?」
「昨日の負け試合で3年引退した区切り、今日は練習オフなりぃ♪夢ちゃんの熱も心配だったし!だいじょーぶ?」
「うん…。薬飲んで寝て、少し気分良くなって…。今は微熱くらいだと思う…。」
「よかった!早く元気になぁれ!これどーぞ♪」
スポーツドリンクとアイスの入った袋を私に差し出す蜂楽。
本当に、清々しいくらい……
いつも通りの蜂楽だ。