第10章 わすれもの
『忘れ物してるよ。』
散々考えて、結局これが一番しっくりくる。
何センテンスかやりとりすれば、細かいことも伝わるだろうし。
文章長すぎても、蜂楽読まなそうだし。
朝早くに送ったのに一瞬で既読が付き、“おはよ”スタンプとメッセージが返ってきた。
『学校に持ってきてくれい♪』
めっっちゃ、いつも通り。
『ごめん、今日熱出て学校休む。朝ウチに寄れる?』
『マジか!ゆっくり休むんだよ♪帰りにいくね!』
帰りかぁ。
部活の後だから夜になる、のか。
学校に予備のが置いてあるのかな…。
「……」
蜂楽のシューズ袋を、チラチラ視界に入れてしまう。
袋から取り出してみたりして。
って、何やってんだろ……私。
「サイズ、でかっ。」
自分のとは比べ物にならないと判りながらも、27.5センチのサイズ表記を見てびっくりしてしまう。
「……可愛いくせに。足も男じゃん。」
また眼に涙が溜まってきちゃったから……
シャワーを浴びて、洗濯乾燥機をセットして。
学校に欠席の電話をして、解熱剤を飲んでからベッドに戻った。
淡々と動いて気を紛らわして、無理矢理涙を引っ込めた。