第10章 わすれもの
ぼーっと脱衣室を見ていると、見慣れないシューズ袋のようなものが目に入った。
まさかと思い、フラフラの足取りで確認に向かう。
「……ウッソでしょ?」
中を確認すると、蜂楽のスパイクだった。
「……忘れ物すんなし。バカ。」
これがないと今日の部活できなくて困るよね?
安いものじゃないだろうけど、予備とか持ってるのかな?
…………。
……連絡するしかないじゃん。
午前6時過ぎになって、起きてるかは判んないけど
ひとまず連絡してみる。
『昨日はごめんなさい。ウチにスパイク忘れてるよ。ないと部活困るでしょ?私熱で学校休みだから、悪いけど朝、取りに寄れる?』
昨日の今日で……かえって軽率?
文もちょっと、くどいかな。
『スパイク忘れてるよ。大切なものでしょ。忘れ物しないでよね。』
お母さん?
昨日のこと意識して、サバサバしちゃってる。
なかなか良い文面が思いつかない。
もっと、事務的なほうが良いのかな。
書いては消し…書いては消し…。