第10章 わすれもの
───嫌だ……待って……
私をひとりぼっちにしないで。
まだあなたのこと……信じたいのに───。
“どんだけ脳ミソお花畑なの?お前。”
「ーーーーっっ!!」
悪夢に出てきた蝉川の、悪魔のような顔と捨て台詞で飛び起きた。
フラッシュバックだ。
「はぁっ……はっ……!」
汗を沢山かいてるのに、体の悪寒はまだ続いてる。
スマホは月曜日の午前5時を表示した。
ダルい体をなんとか起こして、部屋着を着た。
上半身裸のまま寝ていた理由は思い出したくもない。
底なしの罪悪感と喪失感が、再び襲ってくるから。
「蜂楽ぁ……ごめんね……」
消えそうな声で呟いたら、一筋の涙が頬を滑った。
関節が痛くて、手すりを使ってゆっくり階段を下りて一階に向かった。
蜂楽が帰ってから玄関の鍵も開けっ放しで寝てたことを、今更ぼんやり気付く。
体温を測ってみると、38.0℃。
「……学校、休も……。」
昨日は本当に、色々なことがあった。
それを考えることしかできない。
何も手につかない。
ぼーっと脱衣室の方を見た。
昨日は、あの辺りで……
キスして求められて
濡れたシャツを脱がされて
体が燃えるように熱くて
ふたりとも盛り上がって
あー……無限ループ。
その脱がされたシャツもそのままで放置。
こんなに体がしんどいのに洗濯しなきゃ、なんて超現実的なことも考えちゃったりして、ビジー状態。
フリーズしそう、脳のスペック上げたい。