第8章 だいじょーぶだよ。
「蝶野くん、廻のこと褒めてたよ。自分にはない才能の持ち主だって。
SNSのことも弁護士のお父さんに相談してくれるって言ってたし。」
「なんそれ。どんなキャラ変?」
「引き時を解ってるんだよ。それに、私と廻のこと応援してくれるって。」
蜂楽は私の頭に触れてる顔を、少し動かした。
「廻、ニヤニヤしてるでしょ?」
「ちゃは♪バレた?」
「解りやすすぎ。私が蝶野くんとどうこうなるわけないでしょ?ヤキモチ妬く相手、間違えてる。」
「じゃあさ、これからもずぅーーーーっと夢ちゃんと一緒に帰れる?」
「当たり前でしょ。勝手に約束破んないでよ。」
私はもう一度、蜂楽の肩にスリスリした。
“いいこいいこ”の代わりに。
「俺さ、想像力豊かだと思うんだ。優にはね“イマジナリーフレンド”って教わった。」
「イマジナリーフレンド…。」
「俺ん家きた時に観た優の絵。アレ、俺の中の“かいぶつ”。
昔は優の中の“かいぶつ”描いてたけど、今回の個展は俺のなんだ。」
「あ、それで“廻物展”なんだね!」
あの日、なんとなくだけど、優さんの絵に蜂楽の面影を見た。
あれが蜂楽の飼ってる“かいぶつ”……。
「でもいつかはさ、サッカーの楽しさが理解り合える、本物の“ともだち”が欲しいよ。」
“俺は本当は……ひとりぼっちなんだと思う。”
出会った日に、蜂楽が言ってたのを思い出した。
サッカーで蜂楽を支えられない自分がもどかしい。
その役割を全うできる、未だ見ぬ“ともだち”に対する大きな羨望が芽生える。
もし私が男の子なら、蜂楽と一緒にサッカーがしたいだなんて。
口にするのも愚かな…
ただの戯言にしか聞こえないよね?