第7章 自由の才能
ピーッと笛の音が鳴って、フィールドに眼を戻す。
「あ。相手、イエローカード?」
「蜂楽、ファウル取ったみたいですね。」
さっきまで独走していた蜂楽が、緑の上で転んでいた。
監督やチームメイトから強く叱咤されているけど、本人はあまり気にしてないように見える。
ボーっとしている…というか。
「どうしたんだろう…。すっごい怒られてる。」
「ボール持ったままパス出してなかったですからね。」
蝉川も……蜂楽を怒鳴っていた。
蝉川を含めた、蜂楽を責める部員達の怒り方。
普通じゃ、ない。
あんなに天才的なプレーをする蜂楽を……
どうして責めるの?
試合が再開されて、またしばらくすると……
「蜂楽…人いないとこにパス出してますね…。」
「あっ…!」
味方のいるところから大きく外れたエリアにパスを出した。
誰もいない人工芝の上に落ちたボールは、敵チーム選手が掻っ攫って行った。
「やっぱりチームプレーは苦手なんですかね。」
淡々と言う蝶野くん。
───ねぇ、蜂楽?
今日は蜂楽にとって、どんな試合だった?
楽しかった?
つまらなかった?
辛かった?
私にだけは、本当のこと教えてよ。
私、ちゃんと蜂楽のサッカーに……
魅せられたんだよ───。