第7章 自由の才能
試合終了後、私は蜂楽に、
『一緒に帰りたい。』
とメッセージを送ったが、キックオフ前に送ったものも含めて既読は付かなかった。
サッカー部が片付けをし終えるのを出口付近で待って、一緒に帰ろうとしたけど。
人集りや、吹奏楽部の大きな楽器やら機材が目の前を通り過ぎていくだけで、会えずじまいだった。
「蜜浦先輩、蜂楽と連絡つきました?」
吹奏楽部と一緒に出て来た蝶野くんが、心配して声を掛けてくれた。
「……まだ。とりあえず、バス停向かおうかな。」
「会えると良いですね。」
「ありがと…。」
早く蜂楽を見つけたい。
早く蜂楽と一緒にいたい。
早く…早く早く早く……
“サッカーしてる廻は自由で素敵だよ!”って…
伝えたいよ……!
スマホに連絡がないまま、ひとりでバスと電車に乗った。
駅に着いたら、ポツポツと降り始める雨。
ものの数分で本降りに変わる。
ああ……傘なんて、持ってきてない。
耳障りなあの番組を消したせいで、予報された天気すら知らない。
バカみたいだ。
こんなに走って…
こんなに雨に打たれて…
蜂楽のために、こんな私に何ができるかも解らないのに───。
走って走って、今日はもう無理かなって諦めた。
いつも蜂楽と帰りに通る川沿いを、疲れて歩いてた。
その川に架かる大きな橋の、橋脚のたもと。
そこに座り込んでいた、蜂楽を見つけた。
「……蜂楽?」
走って河川敷まで下りて、蜂楽に近付く。
私に気付き、俯いていた顔を上げた蜂楽の眼には…
涙が滲んでいた。